近年、グローバル化が進む中で、企業同士のM&Aも国境を越えて行われるようになりました。
このような異なる国・地域に所在する企業同士が行うM&Aを「クロスボーダーM&A」と呼びます。
本記事では、クロスボーダーM&Aの種類、メリット・デメリット、戦略について解説します。
クロスボーダーM&Aの種類
クロスボーダーM&Aには、以下の種類があります。
・三角合併
企業Aが企業Bを買収し、その後企業Bが企業Cを買収することで、企業Aと企業Cが合併する方法です。
このような方法でM&Aを行うことで、買収先企業の評価額を下げることができるため、買収価格の抑制が可能となります。
・LBO(Leveraged Buyout)
買収に必要な資金を借入金に頼ることで、自己資本比率を低く抑えて買収する手法です。
特に、財務的に健全な企業を買収する場合に有効で、買収企業のキャッシュフローを用いて借入金を返済することができます。
クロスボーダーM&Aのメリット
クロスボーダーM&Aには、以下のようなメリットがあります。
・グローバル市場への進出
買収先企業が海外市場に進出している場合、買収企業はそれによってグローバル市場に参入することができます。
また、買収先企業が持つ市場や技術などのリソースを活用することで、自社の競争力を高めることができます。
・リスク分散
国内市場に偏りがある企業は、海外市場に進出することでリスク分散を図ることができます。
また、海外市場での収益が国内市場での減少分を補うことができるため、企業の安定経営につながります。
・財務面のメリット
グローバル市場に進出することで、買収企業の規模が拡大するため、規模メリットによるコスト削減が可能となります。
また、海外市場に進出することで為替リスクヘッジが可能となる場合があります。
クロスボーダーM&Aのデメリット
一方で、クロスボーダーM&Aには以下のようなデメリットもあります。
・文化・言語の違い
異なる国・地域に所在する企業同士が合併する場合、文化や言語の違いから意思疎通が困難になることがあります。
また、文化の違いから業務プロセスの違いが生じ、業務統合に時間がかかることがあります。
・法律・税制の違い
異なる国・地域に所在する企業同士が合併する場合、法律や税制の違いからリスクや費用が増大することがあります。
例えば、企業買収には多額の課税がかかることがあり、税制の違いから費用が膨らむ場合があります。
・人的リソースの違い
異なる国・地域に所在する企業同士が合併する場合、人的リソースの違いから人材の流出が起こることがあります。
また、異なる国・地域での経営文化や労働環境の違いから、人的リソースの運用に課題が生じることがあります。
クロスボーダーM&Aで用いられる戦略
クロスボーダーM&Aで用いられる戦略には以下のようなものがあります。
・市場進出戦略
海外市場への進出を目的に、現地企業を買収する戦略です。
買収先企業のネットワークやリソースを活用することで、市場参入のスピードを加速することができます。
・製品・技術戦略
買収先企業が持つ製品や技術を獲得することで、自社の製品や技術の開発を加速することができます。
また、買収先企業の持つ技術や製品を活用することで、自社の製品や技術の価値を高めることができます。
・企業再生戦略
買収先企業が経営上の課題を抱えている場合、その課題を解決することで企業価値を高めることができます。
例えば、買収先企業の事業再編や合理化を行うことで、コスト削減や収益性を向上させることができます。
記事全体のまとめ
クロスボーダーM&Aは、異なる国・地域に所在する企業同士が行うM&Aです。
クロスボーダーM&Aには、三角合併やLBO、IN-IN取引などの種類があります。
また、市場進出戦略や製品・技術戦略、企業再生戦略などの戦略が用いられます。
クロスボーダーM&Aには、グローバル市場への進出やリスク分散、財務面のメリットなどがありますが、文化・言語の違いや法律・税制の違い、人的リソースの違いなどのデメリットもあります。
企業経営者や投資家、マーケットアナリストなどのビジネス関係者は、クロスボーダーM&Aの種類やメリット・デメリット、戦略などを把握することで、グローバル市場に参入することやリスク分散などの企業経営について考えることができます。