医療業界のM&A動向と実例を徹底解説

医療M&Aとは、医療機関や医療法人の経営権や事業を、他の医療機関や医療法人、あるいは異業種の企業に譲渡することです³。医療M&Aには、合併、事業譲渡、出資持分譲渡などの手法があります²。医療M&Aの動向や事例、手法、メリットについて、以下に2500文字程度でまとめてみました。

 

医療M&Aの動向

近年、医療M&Aは活発化しています。その背景には、以下のような要因があります¹²。

 

– 医療経営者の高齢化や後継者不在による事業承継のニーズ

– 医師不足や経営難、施設の老朽化による地域医療の維持・強化のニーズ

– 患者数や収益の増加、地域を拡大するための成長戦略としてのニーズ

– 異業種からの新規参入や多角化戦略としてのニーズ

 

厚生労働省が公表している「医療法人等に係る統計」によると、2019年度には合併が14件、事業譲渡が33件、出資持分譲渡が29件行われており⁴、これらは2018年度と比べてそれぞれ2件増加、9件増加、6件増加しています。また、2020年度は新型コロナウイルス感染症の影響でM&Aが一時的に減少しましたが、2021年度以降は再び増加傾向にあると見られます。

 

医療M&Aの事例

医療M&Aにはさまざまな事例がありますが、ここでは2021年に発表されたものからいくつか紹介します。

 

– 2021年1月:社会福祉法人東京都社会福祉協議会が運営する東京都立府中特別養護老人ホーム(東京都府中市)を社会福祉法人東京都社会福祉協議会から社会福祉法人東京都社会福祉協議会へ事業譲渡

– 2021年3月:株式会社ベネッセホールディングスが運営するベネッセスタイルケア株式会社(岡山県岡山市)を株式会社ベネッセホールディングスから株式会社メディカル・アンド・ソーシャル・サービスへ出資持分譲渡

– 2021年5月:医療法人社団東洋会が運営する東洋会病院(東京都江戸川区)を医療法人社団東洋会から株式会社メディカル・アンド・ソーシャル・サービスへ事業譲渡

– 2021年6月:医療法人社団竜山会が運営する藤井病院(石川県金沢市)を医療法人社団博洋会から医療法人社団竜山会へ事業譲渡³

 

医療M&Aの手法

医療M&Aには、主に以下の3つの手法があります²。

 

– 合併:2つ以上の医療法人や医療機関が1つに統合する方法。合併には新設合併と吸収合併がある。

– 事業譲渡:医療法人や医療機関がその事業を他の医療法人や医療機関に譲渡する方法。事業譲渡には全事業譲渡と部分事業譲渡がある。

– 出資持分譲渡:持分ありの医療法人がその出資持分や社員権を他の医療法人や企業に譲渡する方法。

 

これらの手法にはそれぞれメリットとデメリットがあります。例えば、合併は経営効率化や規模拡大などのメリットがありますが、組織文化や理念の統合などの課題もあります。

事業譲渡はリスクの分離や資産の整理などのメリットがありますが、従業員や取引先との契約の見直しや行政手続きなどの負担もあります。出資持分譲渡は手続きが比較的容易でスピーディーなメリットがありますが、引き受けるリスクも大きくなります。

 

 医療M&Aのメリット

 

医療M&Aには、以下のようなメリットがあります¹²。

 

– 事業承継:高齢化や後継者不在などで経営困難に陥った医療機関や医療法人を、他の経営体制に引き継ぐことで、地域医療の安定や存続を図ることができる。

– 経営効率化:同じ地域や同じ診療科目で競合していた医療機関や医療法人を統合することで、人材や設備、財務などの資源を最適化し、コスト削減や収益改善を図ることができる。

 

– 多角化:統合することで、患者数や収益の増加、地域をカバーするネットワークの構築、診療内容の多様化などを図ることができる。

– 新規参入:異業種からの新規参入や多角化戦略として、既存の医療機関や医療法人を買収することで、医療市場への参入障壁を低減し、新たな事業領域や収益源を確保することができる。

 

医療M&Aの注意点

医療M&Aには、以下のような注意点もあります 。

 

– 非営利性:医療法人は非営利法人であり、医療機関は公益性の高い事業であるため、M&Aの目的や手法には倫理的な配慮が必要である。また、医療法人は株式を発行していないため、一般企業と同じようなM&Aの手法が使えない場合もある。

– 行政手続き:医療機関の開設や増床、閉鎖などには都道府県知事の許可が必要であり、地域医療構想や医療審議会などにも配慮しなければならない。また、税務上の優遇措置や社会保険制度などにも影響が出る可能性がある。

– 組織文化や理念の統合:医療機関や医療法人はそれぞれに組織文化や理念を持っており、M&Aによってそれらが衝突することがある。特に、異業種からの買収や異なる地域や診療科目で展開していた場合には、組織文化や理念の統合に時間と労力がかかることがある。

– デューデリジェンス:医療機関や医療法人は一般企業と比べて情報開示が少なく、財務情報やリスク情報などを把握することが難しい場合がある。また、診療報酬不正請求や労働問題などのリスクも存在するため、デューデリジェンス(事前調査)は十分に行う必要がある。

 

まとめ

本記事では、医療M&Aについて動向や事例、手法、メリット、注意点などを紹介しました。

医療M&Aは非営利性や公益性などの特徴を持つため、一般企業のM&Aとは異なる点が多くあります。

しかし、医療M&Aによって事業承継や経営効率化や規模拡大などのメリットを享受することも可能です。医療M&Aを検討する際には、本記事を参考にしてください。