JTのM&Aの歴史と戦略について徹底解説

JTとは


JTとは、日本たばこ産業株式会社の略称です。
たばこ、医薬品、加工食品などを製造している特殊会社で、日本政府が33.35%の株式を保有しています。
1985年に日本専売公社のたばこ事業を引き継いで設立されました。世界的にもたばこ事業を展開しており、2018年時点で世界第4位のシェアを持っています。

JTは、国内外のたばこ市場の変化に対応するために、多角化や海外進出を進めてきました。
1999年には米国のR.J.レイノルズ・タバコ・カンパニーの子会社を買収し、JTインターナショナルを設立しました。2007年には英国のギャラハーを買収し、世界第2位のブリティッシュ・アメリカン・タバコに迫りました。
また、医薬品事業では、がんや感染症などの領域に注力しており、食料事業では、冷凍食品や調味料などを提供しています。

JTは、社会的責任を果たす企業として、喫煙者と非喫煙者の共存や未成年者の喫煙防止などのたばこ対策に取り組んでいます。
また、環境保護や健康経営などのサステナビリティ活動も積極的に行っています。JTは、「人々がより良い生活を送ることができる社会づくり」に貢献することを目指しています。

JTのM&A戦略


JTのM&A戦略とは、国内のたばこ市場の縮小に対応するために、海外のたばこ事業や医薬品事業、食品事業などに多角化していくことです。
JTは、M&Aを「成長の時間を買う」手段として位置づけており、業界では「M&AはJTのお家芸」とも呼ばれています。

JTがM&Aを成功させた秘訣は、「主体性」と「謙虚さ」だと言われています。
主体性とは、自ら積極的にM&Aを実施することや、買収した企業と協力しながら統合計画を立てることです。
謙虚さとは、買収した企業の文化や価値観を尊重することや、自ら学ぶ姿勢を持つことです。これらの要素があってこそ、M&Aで成長することができるとJTは考えています。

JTはこれからもM&Aでグローバル化を推進していくでしょう。
しかし、M&Aは成功するだけではありません。
失敗するリスクもあります。
例えば、買収した企業との統合がうまくいかなかったり、買収価格が高すぎたり、買収後に不祥事が発覚したりする可能性があります。
そうした場合には、M&Aで得た利益が減少したり、損失を被ったりする恐れがあります。

JTのM&A事例

R.J.レイノルズ・タバコ・カンパニーの子会社を買収


1999年に米国のR.J.レイノルズ・タバコ・カンパニーの子会社を買収し、JTインターナショナルを設立。
世界第3位のたばこメーカーになりました 。

このM&Aは、JTが初めて大規模なクロスボーダーM&Aを実施した事例です。
R.J.レイノルズ・タバコ・カンパニーは、米国最大手のたばこメーカーであり、ウィンストンやキャメルなどの有名ブランドを持っていました。
しかし、多額の負債を抱えており、米国外のたばこ事業部門を売却することにしました。JTはこの機会を逃さず、約9,400億円(78億ドル)で落札しました。
これにより、JTは世界70カ国に販売網を拡大し、世界第3位のたばこメーカーに躍り出ました。
また、買収した企業との統合計画をわずか8カ月でまとめるなど、迅速かつ効率的な統合を実現しました。

英国のギャラハーを買収


2007年に英国のギャラハーを買収し、英国やアイルランドなどの新たな市場を開拓しました 。
このM&Aは、JTが世界第2位のたばこメーカーであるブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)に迫るために実施した事例です。

ギャラハーは、英国やアイルランド、オーストリアなどで高いシェアを持つたばこメーカーであり、ベンソン&ヘッジスやLDなどのブランドを有していました。
JTは約1兆7,800億円でギャラハーを買収し、わずか100日間で統合計画をまとめました。
これにより、JTは欧州市場での地位を強化するとともに、中東やアフリカなどの新興市場への進出も促進しました。

エチオピアのたばこ大手であるNTE社の株式を取得


2016年と2017年にエチオピアのたばこ大手であるNTE社の株式を取得し、アフリカ市場に進出しました 。
このM&Aは、JTがアフリカ市場での成長機会を見出して実施した事例です。

NTE社は、エチオピア最大のたばこメーカーであり、ナイロンやデライトなどのブランドを持っていました。
エチオピアは人口が1億人以上であり、経済成長率も高い国です。しかし、たばこ市場はまだ未開拓であり、喫煙率も低い国でもあります。
JTはこの潜在的な市場に着目し、2016年に現地政府からNTE社の発行済株式40%を約535億円で取得しました。そ

の後2017年にさらに約30%を約490億円で取得し、NTE社を子会社化しました。
これにより、JTはエチオピア市場におけるリーディングポジションを確保するとともに、アフリカ市場への足がかりを築きました。