ファンドM&Aの役割と種類: バイアウトファンド、MBOファンド、企業再生ファンド、ディストレスファンドを解説

計算機で計算をする女性と金銭の確認をしている写真

ファンドM&Aとは、投資ファンドが企業の株式を買収し、経営に関与して企業価値を高め、株式売却やIPOなどで利益を得ることを目的としたM&Aのことです。
ファンドM&Aには、以下のような種類があります。

投資ファンドとは

投資ファンドとは、複数の投資家から集めた資金を用いて、株式や債券などの金融商品や、不動産や映画などの現物などに投資し、そのリターンを分配する仕組みのことです。
投資ファンドは、一般にファンドとも呼ばれます。

投資ファンドの種類

投資ファンドには、様々な種類がありますが、大きく分けると以下のようになります。

– 投資信託:投資家から集めた資金を信託財産として設定し、信託銀行がその運用を委託された投資顧問会社に委託して運用するものです。
投資信託は、市場性のある金融商品に投資するもので、投資家は信託報酬という手数料を支払います。
投資信託は、会社型と契約型に分けられます。

– 商品ファンド:商品ファンド法に基づいて組成されるもので、金や原油などの商品や、その先物取引やオプション取引などに投資するものです。
商品ファンドは、商品価格の変動によってリターンが決まります。
商品ファンドは、一般的にリスクが高いとされます。

– ヘッジファンド:ヘッジファンドは、法的な規制が緩いことを利用して、様々な手法や戦略を用いて高いリターンを目指すものです。
ヘッジファンドは、レバレッジやショートセルなどの積極的な取引を行うことが多く、リスクも高いとされます。
ヘッジファンドは、一般的に大口の投資家や機関投資家などに限定されています。

– プライベート・エクイティ・ファンド:プライベート・エクイティ・ファンドは、非上場企業や上場企業の非公開株などに投資するものです。
プライベート・エクイティ・ファンドは、投資先企業の経営改善や成長支援を行い、将来的に株式を売却して利益を得ることを目指します。
プライベート・エクイティ・ファンドは、一般的に長期的な投資期間を要します。

– 現物ファンド:現物ファンドは、不動産や映画などの現物に投資するものです。
現物ファンドは、現物の収益や価値変動によってリターンが決まります。
現物ファンドは、一般的に市場性が低く流動性が低いとされます。

ファンドによるM &A種類

– バイアウトファンド:キャッシュフローが安定的に創出できる成熟した企業の株式に投資するファンド。
議決権株式の過半数を取得して経営権を獲得し、経営支援や事業再編などで株式価値を上昇させてから売却する。

– MBOファンド:MBO(経営陣による企業買収)を目指す企業経営者に資金を提供するファンド。
現在の経営者が資金を出資し、事業の継続を前提として企業の株式を購入する。
企業の所有と経営が一致するため、中長期的な視野に立った経営が行える。

– 企業再生ファンド:経営不振や経営破綻に陥った企業に対して、投資家から集めた資金を投入し、企業の立て直しを行うファンド。
設備投資やコスト削減などで企業価値を上昇させてから売却する。
リスクが高いが、利益も大きい。

– ディストレスファンド:債務超過や倒産危機にある企業の債権や株式を安く買い取り、債務整理や事業再生などで回収率を高めるファンド。
債務超過分の減損処理や債権者との交渉などが必要。

– ベンチャーキャピタルファンド:高い成長性が見込まれる未上場のベンチャー企業の株式に投資するファンド。
エクイティ投資の形式で資金を提供し、経営助言や役員派遣などで企業価値を上昇させたら引き受けていた株式を売却する。

投資ファンドによるM&Aの事例

– バイアウトファンドの事例:ユニクロの親会社であるファーストリテイリングは、2005年に日本のバイアウトファンドであるリンク・マネジメント・パートナーズ(LMP)と共同でフランスのファッションブランド「コントワー・デ・コトニエ」を買収しました。
この買収により、ユニクロは欧州市場への進出を加速させるとともに、コントワー・デ・コトニエのブランド力やデザイン力を活用して自社の商品力を高めました。

– MBOファンドの事例:日本のMBOファンドであるアドバンテッジ・パートナーズは、2007年に日本航空(JAL)からJALホテルズを買収しました。
この買収により、JALホテルズはJALから独立して経営判断を行えるようになり、コスト削減や収益改善に取り組みました。
2010年には米国のホテル運営会社であるマリオット・インターナショナルに売却され、高い利益を上げました。

– 企業再生ファンドの事例:米国の企業再生ファンドであるセラス・キャピタルは、2012年に日本の家電メーカーであるシャープから液晶パネル工場を買収しました。
この買収により、シャープは赤字工場からの脱却と資金繰り改善を図りました。
セラス・キャピタルは工場の生産性や品質を向上させ、中国や台湾などの顧客との取引を拡大しました。
2016年には台湾の鴻海精密工業(ホンハイ)に売却され、大きな利益を得ました。

– ディストレスファンドの事例:米国のディストレスファンドであるオークトゥリー・キャピタルは、2009年に日本の不動産会社であるダイビルから債権を買い取りました。
この買い取りにより、ダイビルは債務超過から脱却し、再建計画を策定しました。
オークトゥリー・キャピタルはダイビルの債権者として再建支援を行い、2014年にはダイビルが株式市場へ再上場することに成功しました。

-ベンチャーキャピタルファンドの事例:日本のベンチャーキャピタルファンドであるグローバル・ブレインは、1998年に設立され、インターネットやIT関連のベンチャー企業に投資を行っています。
投資実績としては、メルカリ、ライフネット生命保険、グリー、ピクスタなどがあります。
グローバル・ブレインは、投資先企業に対して経営支援や事業提携先の紹介などを行うほか、自社が運営するアクセラレータープログラム「GB-VI Growth Program」や「GB-VI Growth Hack Camp」などを通じて、起業家の育成やコミュニティの形成にも貢献しています。

以上が、ファンドM&Aの事例です。ファンドM&Aは、ファンドの目的や戦略に応じて様々な形態がありますが、共通しているのは、投資先企業の成長や収益性を高めることを目指しているという点です。
ファンドM&Aは、企業にとって新たな資金源やパートナーとなり得るだけでなく、ファンドにとっても高いリターンを得られる可能性があるため、今後も注目される動きと言えるでしょう。

 

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