日本のM&Aの特徴
日本のM&A市場は、近年活発化しており、2021年には過去最高の2,500件以上のM&Aが成立しました。
日本のM&A市場を活性化させる要因としては、国内市場の縮小による海外進出を目指すM&A、経営者の高齢化・少子化による後継者問題解決のためのM&A、新規事業の開拓・成長戦略としてのM&Aなどが挙げられます。
日本のM&A市場の特徴は、敵対的買収が依然として少ないという点も挙げられます。
敵対的買収とは、買収対象企業の経営陣や株主の反対を押し切って行われる買収のことです。日本では、企業間の信頼関係や文化的な違いなどが敵対的買収を阻む要因となっています。
日本のM&A事例
ミライト・ホールディングスによる西武建設の買収
ミライト・ホールディングスは、通信工事業界の大手で、通信設備の施工や保守運用に強みを持っています。
西武建設は、西武ホールディングスの100%子会社で、住宅建築や都市開発などを手がける総合建設会社です。
2022年1月に、ミライト・ホールディングスは西武建設の株式の95%を約620億円で取得する契約を結びました。同年3月31日に株式譲渡が完了し、西武建設はミライト・ホールディングスの子会社となりました。
ミライト・ホールディングスは、西武建設を傘下に入れることで、都市開発や再生可能エネルギー事業で100億円規模の相乗効果が見込めるとしています。
一方、西武ホールディングスは、新型コロナウイルスの影響で鉄道やホテル事業が低迷する中、非中核事業を売却し事業再編を進める方針でした。西武建設の株式売却益約380億円を2022年3月期連結決算で特別利益として計上する見込みです。
博報堂DYホールディングスによるソウルドアウトの子会社化
博報堂DYホールディングスは、広告・マーケティング業界の大手で、博報堂や読売広告社などを傘下に持っています。
ソウルドアウトは、デジタルホールディングスの連結子会社で、中小・地方企業向けにウェブマーケティング支援事業を手がける会社です。
2022年2月に、博報堂DYホールディングスはソウルドアウトにTOB(株式公開買い付け)を実施し、完全子会社化すると発表しました。買付価格は1株につき1809円で、買付予定数は1079万6493株です。
TOBの目的は、今後成長が期待される中小・地方企業向けデジタル広告・マーケティング領域での競争力向上につなげることです。博報堂DYホールディングスはインターネットを重点領域に据えており、売上高伸長率で年率15%増以上を目指しています。
ソウルドアウトの親会社であるデジタルホールディングスは保有する全株式54.78%をTOBに応募することを表明しています。TOBが成立すれば、ソウルドアウトの東証1部への上場は廃止となります。
ソニー・インタラクティブエンタテインメントによるバンジーの買収
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、ソニーグループのゲーム事業を担う子会社で、「プレイステーション(PS)」シリーズなどを開発・販売しています。
バンジーは、米国ワシントン州に本拠を置くゲーム会社で、「デスティニー(Destiny)」シリーズや「ヘイロー(Halo)」シリーズなどの人気作品を開発しています。
2022年1月に、SIEはバンジーを36億ドル(約4100億円)で買収すると発表しました。買収は2022年7月に完了したと発表されました。
買収の目的は、SIEが持つ多様なエンターテインメントと技術資産を活用し、バンジーの進化を支えることです。
バンジーはSIEの独立した子会社として運営され、ゲーム開発や人材採用を強化するほか、ゲームで培ったIP(知的財産)を様々なエンタメに展開する予定です。
SIEは買収後もバンジーの独立性を保ち、「複数のプラットフォームにゲームの供給を続ける」と説明しています。SIEは近年、ゲーム開発会社を相次いで買収し、PS向けソフトの開発を強化しています。
ニトリホールディングスとエディオンの資本業務提携
ニトリホールディングス(以下、ニトリ)は、家具・インテリア用品の販売・製造・輸入などを行う企業グループで、「ニトリ」や「島忠」などの店舗を展開しています。
エディオンは、家電製品販売を主とする企業グループで、「エディオン」や「100満ボルト」などの店舗を展開しています。
2022年4月27日に、ニトリとエディオンは、両社の経営資源やノウハウを相互活用し、両社の事業拡大と企業価値向上を目指すために、資本業務提携を行うことを発表しました。
資本提携としては、ニトリが2022年5月13日に、LIXILから市場外相対取引でエディオンの普通株式896万1000株(発行済株式総数の8.60%)を約102億円で取得する予定です。
またその後、市場外相対取引または市場買付によりエディオンの普通株式146万3900株(発行済株式総数の1.40%)を追加取得する予定です。
業務提携としては、両社は、魅力的な店舗開発に向けた協働、商品の相互交流と商品ラインアップ拡充、EC事業でのシナジー創出、物流ネットワーク及び設置サービス・アフターサービスネットワークの相互活用、リフォーム事業・法人ビジネスにおけるシナジー創出などについて協議・検討を行っていくこととしています。
菱地所による日本リージャスホールディングスの子会社化
日本リージャスホールディングス(以下、日本リージャス)は、世界最大のワークスペースプロバイダーであるIWG plc(本社:スイス)のビジネスモデルを日本に持ち込み、フレキシブルオフィス事業を展開する企業です。
2019年に貸会議室大手の株式会社ティーケーピー(以下、TKP)が日本リージャスの全株式を取得し、完全子会社となりました。
2022年12月6日に、三菱地所株式会社(以下、三菱地所)は、TKP傘下の株式会社TKPSPV-9号より、日本リージャスの全株式を取得することに合意し、子会社化することを発表しました。
これにより、三菱地所は日本リージャスの既存拠点を承継するとともに、IWGの日本国内における独占的パートナーとしての権利と運営・開発権を取得しました。
三菱地所は、日本リージャスが展開する多様なワークスペースを、自社が展開するセンターオフィスやフレキシブルオフィスなどと組み合わせて、最適なワークスタイルを提案していくとしています。また、TKPとは今後もシナジー創出強化に向けた協議を開始することに合意しています。